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リーディアさんの魔法書Act.2

昨日はよく眠れた。
蝙蝠もどきを宿から追い出すのに手間をかけてしまった。
それだけでも迷惑をかけているというのに僕の寝てる部屋の窓の外で騒がれた所為で僕は寝不足だ。
元々あまり顔色のよくない僕の顔は今にも死にそうな病人のようだ。
あいつにはぜひ自分の住処に帰ってほしいものだがそう簡単には帰らないだろう。
宿屋から出ると突然視界が悪くなった。
ああまるで夜のようだな、それに獣臭い。
もう何も考えたくない、ああ最悪だ、最悪だ。今はそれ以外の言葉が出てきそうに無い。
だが一向に僕の目を蔽っているものは退こうとしない。

「おい蝙蝠もどき。退け。」

「もう!もうもうもう!リーディアったら酷いです!あんな寒空の中私を追い出すなんて!」

蝙蝠もどきが泣きながら僕に擦り寄ってきた。
うわぁ…、顔洗ったのに。
獣臭さには慣れてなく、吐き気が。

「追い出さなければ僕も寒さに耐えなければならなかっただろうが。悔しかったら人間にでも変態してみろ。」

「できますけどぉ、できません!」

訳が分からない。
出来るならすれば良かったものを…。
まあ人間に化けたところで僕は絶対に宿代を出したくない。
二人部屋のほうが値段が遥かに上だったし、そもそも相部屋をしたくない!
それがもし絶世の美女や幼児に化けたとしても。
別に僕の心が狭い訳でも男色という訳でもない元がこんなにも気色悪い蝙蝠のような生物と相部屋をするのが嫌だ。

「どうして?」

「だってぇ…、私ぃ…。」

「気持ち悪い喋り方するな。焼くぞ。」

「この姿を一旦解かないといけないじゃないですか!時間と労力の無駄じゃないですか?」

自分の耳を疑った。
自分の姿を自由に変えられるということはそれなりに力が強く、小等な魔物ではないということ。
今の姿はどう見ても使い魔や小等な魔物。
位が高いなら自分より下に化ける必要は無い。
それよりもこの様な自分より位が低いものに化けるほうが時間と労力の無駄だ。

「え?お前その姿が元の姿じゃないのか?馬鹿か?」

「…元の姿だと、とっても目立ってしまうんですもの…仕方ないじゃないですか!」

そのことを伝えると蝙蝠もどきは僕から離れて飛んだ。
その後そのことに関係することは一切喋らなかった。
ねえ!ここで朝食とりましょう!となんだか高そうなレストランの前でクルクルと回ってる姿に殺意が沸いた。
僕が一瞬でも傷付けてしまったかと心配して損した気分だ。

「やっぱり焼いてしまえば良かった…!」

リーディアさんの魔法書Act.1

サクサクと枯れた葉は音を立て。
僕のズボンには草の種のようなものが付く。
こうやってこの雑草は生息域を広めるんだなぁと暢気に考えて。
今来た道とは言えない獣道を見てため息を吐いた。
普段は運動を全くしない僕がここまで来れた事に感心した。
気まぐれで旅に出ようと思いつくまでは良かった。
でもその時のノリと勢いだけで徒歩でここまで来てしまった自分を殴ってやりたい。
戻るのも気だるい、だからと言ってコレからずっと徒歩だと自分の身が持ちそうに無い。
つくづく僕は計画性の無い男だと思う。
まあ適当に歩いていれば村くらいには着くだろうと重い足を無理やりに前へと出した。


「おやここを通る人なんて居るとは思いませんでしたよ!」

声が聞こえたので辺りを見回してみる。
誰も居ない、全く薄気味悪いことだ。
疲れているのだろうか?今日はぜひとも宿屋のフカフカベッドで寝たいものだ。

「こっちですよ!私の声が聞こえるなら貴方魔法使いでしょう?」

木の上辺りで声が聞こえて顔を上げるとなにやら気味の悪い生き物が居た。
お生憎様だが僕は魔法使いであるが猛獣使いではないので魔物とは話したくない。
妖精さんや頭に角の生えた馬辺りなら相手にしただろうけど。

無視しようと歩き出したところで肩の辺りにしっとりとした物が乗ってきた。
うわ、気持ち悪い。コレだから魔の物は嫌いだ!
肩に無断で乗ってきた蝙蝠なんだか良く分からない生命体は僕に笑い掛けた?

「一人旅ですか?今時珍しい。最近の魔法使いは家に篭って魔法書を読んで薬でも作ってるだけですよ。」

「そうかい。でも外に出るのは良い事だ、新たな発見が出来るしそれに素材だって手に入る。」

それを聞いて蝙蝠もどきはクスクス笑った。
僕は不機嫌な顔を隠そうとはしないでそのままの顔で蝙蝠もどきを睨んだ。
いやー私嫌われてますねぇ。と嬉しそうに言った。気持ち悪い。
ぶん投げてやりたい。

「素材なんて今時鴉便だって梟便だってありますよ?お家にいてもお取り寄せが出来ますよ?」

「自分の目で見て決めたい。」

ますます蝙蝠もどきのクスクス笑いが深まった。
今なら火を起こす魔法を使ってこいつを焼き殺すことが出来そうだがそれは僕の良心が許さなかった。
魔法使いさん怖い顔してますよ!とニヤニヤ笑いながら言った。こいつはどうやら僕を怒らせたいらしい。

「ところで魔法使いさんの名前を教えてください。私は特に名前が無いので好きに呼んでください!」

「リーディア。」

「あ、女の子みたい。可愛い名前ですねぇー!髪の毛も長いし!もう女の子でいいですよね!」

ほら町が見えてきましたよ、早く行きましょう!と蝙蝠もどきは僕の肩を降りて町のほうへと案内するかのように飛んでいた。
こいつ、まさかと思っていたが付いて来るつもりか。
コレがドラゴンと呼ばれる類のものだったら喜んで移動手段にしたものを。
こいつはただの蝙蝠もどきだ。
宿屋はここですよ〜とクルクルと飛んでいた。

「おい、お前付いて来る気かよ。」

「え?ダメですか?役に立ちますよ?」

「役に立つって…非常食位にしかならないだろ蝙蝠もどき。」

「お腹壊しますよ?」

宿屋のドアを開くと蝙蝠もどきも付いてきた。
もしかして気に入られてしまったのか。

「お客さん!うちはペットはちょっとねぇ〜…。」

「そうですか…。リーディア今日は野宿ですね!」

「帰れよ。」

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